1月末の自主トレから手になじませてきたメジャー球と、WBC公認球が違うことを知ったのが15日。「何じゃそりゃ!」と慌てて取り寄せ、手元に届いたのは16日のことだった。
この日、2人をWBCへ送り出すための「壮行試合」となる紅白戦で“ぶっつけ使用”するか否か―。直前まで黒田、ブラウン監督、清川投手コーチの3者で慎重に話し合われた。だが杞憂(きゆう)に終わる。黒田の適応力、修正能力は、やはり超一級品だった。
初回、先頭の木村一をスライダーで中飛に切る。バットに当てるのがやっとだった。続く天谷にストレートの四球を与えるが崩れない。福地の初球、注文通りの遊ゴロ併殺。比嘉も初球で一邪飛に打ち取った。
二回も山崎に無死から右前に運ばれ、山本芳に死球を与えたが、後続をピシャリ。4番候補・栗原も外角いっぱいスライダーで見逃し三振に仕留めた。球の特徴をモノにした三回は3人を、8球で終わらせた。
3回わずか31球、1安打無失点の完ぺきデモ。「縫い目が低いような感じがした。変化球を多めに投げて、曲がり方を試してみたけど、だいぶ違った。でも、毎日ボールを握っていれば慣れるし、何とかなる」と、想定内の誤差を強調した。
前夜には、ブラウン監督からWBCでの調整法を含む、シーズンの“中4日調整メニュー”を渡された。「参考にしてくれ、と言われた。僕のことを信頼して、全部任せてくれる。メニュー通りにやれとかじゃなく、監督が僕を思う気持ちの表れですかね。愛する息子を地方の大学に行かせる思いだ、とも言われた」と黒田は感激した。
監督だけじゃない。米国人のベイル、ロマノらからも「アメリカじゃなく、黒田を応援する」とエールを送られた。
広島で家族との束の間の休息を取り、20日から代表合宿に入る。起用法はもちろん、24日からの練習試合での登板も未定のまま。未知の闘いの要素は濃い。それでも「何とかここまで来れた」。チームの熱い思いを背負い、世界を撃つ臨戦態勢に入った。


