筋肉の鎧(よろい)が栗原をガードした。1試合で2死球を食らいながらも、平然としていた。「顔にさえ当たらなければいいんです」。試合直後は、左ひじのしびれが抜けずアイシングをしたものの、以後は何もなかったかのように振る舞った。
六回の先頭打者では左ひじに、九回無死一塁からは左肩に死球を受けた。特に2度目の死球を受けた瞬間、“熱血漢”ブラウン監督がベンチから3歩飛び出したほどだ。しかし栗原が一塁へ歩く姿を見て、苦笑いしてベンチに戻った。「彼はタフだね」と舌を巻く新指揮官初の抗議を、見事に打ち消した。
広島には鉄人が存在した。この日の栗原は、衣笠、金本にも負けない力強さもみせた。昨季は後半戦だけで15本塁打。「そのシーズン中も内角が多かった。今年も攻められると思っています」と、死球に対する覚悟はできている。
当たったのは“体”ばかりではない。バットでも結果を残した。初回二死から左中間フェンス直撃の二塁打。さらに七回二死一、二塁からは、右中間を破る二塁打だ。走者2人が生還するのを見て、そのときは微笑んでみせた。
2本目の二塁打こそ、「イメージ通りにうまく打てましたね」と納得顔だったが、1本目の二塁打に不満を残した。「フォークに泳いでしまいました。(右中間スタンドに)放り込めた球でした」と反省した。しかしその言葉からは、新井と並ぶ大砲への風格さえ漂わせていた。
絶好調だった沖縄キャンプに比べて、日南に来てからは紅白戦で5打数1安打と結果を残せていなかった。それでも、米自主トレで鍛え上げた筋力を武器に、体になじむスイングを手に入れつつある。「ベストを尽くすことだけを考えていきます」。昨年までケガに泣かされた。後半戦でみせた15発の“瞬発力”を、フルシーズン生かすための完成品へ近づきつつある。


